ダラス歳時記



夏。


暑いーっ。

ダラスの夏は、5月頃から始まる。
お手紙の封筒の糊が熱に負けて
「ぱかっ」てはがれて届き始めたら、夏。
道に落ちてる1セント硬貨を拾おうとして
「あぢっ」って火傷したら、夏。
気象データ会社の気温計が暑さで故障して
正しい気温が判らなくなったら、夏。
ダラスの夏は、馬鹿馬鹿しいほどに強烈です。
毎日毎日とーっても暑い。
10時から5時まではお外に出ちゃ駄目だって
テレビでも警告していたよ。

でも、暑い暑いって言っても
直射日光さえ避けてれば、本当は結構快適なの。
気温は確かに物凄く高いけど
日本の夏と違って湿度が低いからね。
午後の1番暑い時間でも
木陰に入ると涼しくて気持ちいいよ♪
だからって、うっかりウトウト居眠りなんかしてたら
知らない間にお日様が動いて木陰がずれて
お肌が真っ黒焦げになっちゃうけど。
(ぼくたちはダニ退治になって体にいいのかなぁ?
でも、暑すぎるのは、やっぱり参っちゃうよ…)

アパートの中にはプールもある。
小さいけど、ちゃんと泳げる広さと深さだよ。
毎日、無料で水遊びし放題!
なのに、真夏のプールには人影が無い。
ひんやり・いい気持ちで水に浸かっている間も
顔や肩は水の外。
ダラスの夏の太陽に15分も炙られたら
大変なことになっちゃうもん。
でも、キラキラ光る水面を窓から眺めるのは
いかにも「夏!」って感じで、大好きだな。

ここは、アパートの中を流れる渓流。
お魚さんやカメさんも住んでるし
水鳥さんも泳いでる。
緑の中のお散歩はとっても楽しいよ。
でも、この渓流のある中庭に行くまでに
コンクリートの道を1分弱、歩かなきゃならない。
由里姉ちゃんは、それがつらくて(!)
滅多にお散歩に連れてってくれません。
冷房の効いたお家の中で
ぐてーっと寝そべってアイスティー飲みながら
夏が過ぎ去るのを待つだけの毎日です。




7月4日は、アメリカ合衆国の独立記念日。
1776年のこの日、独立宣言が公表されたんだって。
でも、統治国だったイギリス側が独立を承認して
正式にアメリカが成立したのは1783年9月3日。
こっちの方が誕生日っぽいって思うのはぼくだけ?

実は、ダラスのJuly 4thはあんまり盛り上がらない。
会社は一応お休みになるし、夜は花火も上がるけど
あとはお店の飾りつけが国旗色になるだけ。
普通の市民の反応はとっても淡白。
だってテキサスは、「アメリカの一部」じゃ無いもん。
1845年にアメリカに併合されはしたけど
心は今も、テキサス共和国という1個の独立国。
だからアメリカの誕生日なんか関係ない…のかな?



夏の終わりに田舎道をドライブしたら
ポップコーンみたいな白い花の咲いた畑が
道の両側に、果てしなく広がってた。
車を停めてよく見ると
それは花じゃなくて、綿の実だったの。
見渡す限り、どこまでも続く綿畑!
アメリカの南半分は「コットン・ベルト」て言って
綿花の栽培が盛んな地帯なんだって。
中でもテキサスは、国内1の生産地なんだ♪
この綿は、ふわふわのお布団になるのかな、
ぼくたちみたいなぬいぐるみになるのかな。
ぼくは合成繊維のぬいぐるみだけど
それでも、この風景は「心の故郷」て気がするよ。

もっと早い時期に行ったら
花が咲いてるのも見られるかな。
でも、やっぱり「実」のほうが魅力的だよね。
できるなら、ぼくも種を分けてもらって
綿を育ててみたいなぁ。



9月も半ばを過ぎれば、ちょっぴり気温も下がって
お外を歩くのもそれほど苦じゃなくなってくる。
まだまだ暑いけど、生命の危険は無いって感じ。
風の強い日、朝晩は半ズボンだと寒い日もあるよ。
でも、ながい夏の間の運動不足のおかげで
由里姉ちゃん、春まではいてたGパンに体が入らない。
太ももがつっかえて、お尻も引っかかって、
ボタンとボタン穴の距離が10センチ(きゃあ♪)。
日本じゃ「食欲の秋」を迎える頃だけど
ダラスには「頑張って食事を減らさなきゃの秋」がやってきます。
(由里姉ちゃんだけかな?)



ダラス歳時記・/夏// (前年の秋/冬)